【作成例5つ】介護事業所のキャリアパス・評価シートを目的別に紹介

「介護のキャリアパスを作成するために、実際の例を参考にしたい」と考えるのはとても効果的です。

キャリアパスや評価シートは、何十年も前から改善が繰り返されてきた歴史があります。

この記事では、介護に特化したキャリアパス・評価シートの作成例を5つ紹介します。

また、「キャリアパスがなぜ重要なのか?」「具体的に作成する手順は?」という疑問にもお答えしますので、ぜひご覧ください。

目次

介護のキャリアパスとは?

介護のキャリアパスとは、介護職員がキャリアを通じてどのように成長し、昇進していくかを示す道筋のことです。

特に介護業界では、職員が専門性を高め、現場で必要な幅広いスキルを習得することが求められます。
だからこそ「どのような能力を身につければ、この役職に就くことができる」という羅針盤が必要です。

しかし、多くの事業所では、具体的なキャリアパスが整備されておらず、職員が将来のビジョンを持ちづらい状況にあります。
そこで、介護事業所側が職員のキャリアパスを明確にしてあげることができれば、職員はキャリアの現在地点を把握しやすいでしょう。

キャリアパスを作成するメリット

キャリアパスを作成するメリットを3つ紹介します。

  1. 職員がキャリアを見通しやすくなり、モチベーションが向上する
  2. 給与面などでの不満を軽減できるため、離職率が下がる
  3. 施設側が求める評価基準を浸透させることができ、利用者の満足度が高まる

このようにキャリアパスを明確にすることで、事業所側と職員側の両方にメリットがあります。

さらに、職場環境が良くなると、地域での評判が高まり、新しい人材の採用にも繋がるでしょう。

そのため、キャリアパスは施設の運営において、職員の成長と組織の発展を同時に実現できる有効なツールなのです。

キャリアパスを上手く導入するコツ

キャリアパスを導入する際に大切なのは「職員が納得できるかどうか」です。

キャリアパスは作成して終わりではありません。
むしろ、作成してから事業所全体に浸透させることで効果を発揮します。

そのため、キャリアパスを職員に見せたときに「しっかり私の将来を考えてくれているんだ」と納得してもらうことが大切です。

この後の章で、キャリアパスの作成手順や具体的な作成例を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

キャリアパスを作成する3ステップ

ここでは、キャリアパスを作成するステップを解説します。

具体的な手順は以下の3ステップです。

  1. 組織で重視することを明確にする
  2. 役職ごとに職務内容を設定する
  3. 役職ごとに必要な能力を定義する

1、組織で重視することを明確にする

まず、キャリアパスを効果的に作成するには、組織で重視するポイントを明確にすることが重要です。

キャリアパスを設計する際には、その施設が目指す方向性に沿ったものにしなければなりません。
そのため、事業所で大切にしている価値観や必要なスキルを明確にするのが第1ステップです。

逆に言うと、最初に人材基準を明確に決めておけば、他に決めるべき内容(役職ごとに求められる能力など)を決めやすくなります。

たとえば、質の高いケアを提供することを最優先にする施設では、介助技術やコミュニケーション能力を重視するでしょう。
また、地域との連携を強化したい事業所では、挨拶・身だしなみなどの項目が評価基準になるかもしれません。

このように、組織が最も大切にする要素を中心にキャリアパスを設計することで、一貫性のあるキャリアパスを作成する土台が整います。

2、役職ごとに職務内容を設定する

2つ目のステップとしては、役職ごとの職務内容を設定しましょう。

介護現場では、介護スタッフから施設長まで幅広い役職が存在し、それぞれの職務内容は大きく異なります。
そのため、各役職でどのような職務内容が求められるかを考えることで、職員はどのようにスキルアップすれば良いかが明確になるのです。

たとえば、現場の介護スタッフには、日常的なケアや直接的なコミュニケーションが求められます。
一方で、施設長など管理職になると、指導能力や業務効率化の観点が必要になるでしょう。

このように、役職ごとの職務内容を設定することで、誰の目にも評価基準が明らかになります。

評価の透明性が高まることで、職員のモチベーションにも繋がるでしょう。

3、役職ごとに必要な能力を定義する

最後に、役職ごとに必要な能力を具体的に定義することが3つ目のステップです。

2つ目のステップで役職ごとの職務内容を決定したので、次は「その職務内容を実行するためにはどのような能力が必要か?」を明確にしましょう。
ここで大切なのは、職務を完璧にこなすために必要なスキルや知識をできるだけ細かく書き出すことです。

たとえば、施設長になるのに必要な能力を「現場統括能力」と抽象的に書くのではありません。

以下のように、具体的な能力に分けて記載するのが望ましいです。

  • リーダーシップ
  • 問題解決能力
  • マネジメントスキル

このように、各役職に求められる能力が具体的に定義されていると、職員は「この能力を付ければ、次の役職に進めそうだ」というのが理解しやすくなります。
さらに、管理者側も、定義した能力を基に、職員ごとのパフォーマンスを公平に評価できるようになるでしょう。

介護事業所のキャリアパス・評価シートの作成例を5つ紹介!

ここからは、介護事業所のキャリアパス・評価シートの作成例を5つ紹介します。

  1. 様々なキャリアパスを提示する
  2. 離職者を減らすためのキャリアパス
  3. 要件の到達状況を判断する評価シート
  4. 未経験の人材を育てるためのキャリアパス
  5. 人材育成を促進するための評価シート

すでに洗練された作成例を参考にし、あなたの施設で活用できるキャリアパスを作成してみてください。

1、様々なキャリアパスを提示する

まず1つ目に、豊富なキャリアパスを用意することで、社員の定着率を高める例を紹介します。

介護事業所で様々なキャリアパスを提示できると、キャリアアップを真剣に考える優秀な人材を確保することに役立ちます。
この画像では、業界全体で共通するキャリアと独自キャリアの可能性を両方提示しているのが特徴です。

「将来的に何をしたいかが決まっていないから、選択肢が多い事業所に入りたい」と考える人は少なくありません。
そのため、このようにキャリアパスの選択肢を豊富に示すことで、新卒社員の定着率が高まるのです。

さらに、資格取得支援も織り交ぜることで、より効果的なキャリアパスとして活用することができます。
ぜひ、あなたの事業所でキャリアパスを作成する際の参考にしてみてください。

2、離職者を減らすためのキャリアパス

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役職職務内容必要な能力
施設長・事務長法人全体の運営と経営を管理し、施設や事業所全体の方針を決定、統括する。・経営判断力と戦略立案力
・法的知識や財務管理力
・リーダーシップ
統括部長施設や事業の指揮を執り、部門の目標達成に向けて職員を統括し、問題解決の責任を持つ。・部門運営の計画能力
・業務全体の調整力
・チームの運営能力
センター長・課長部門の運営を支援し、事業の方針に基づいて日々の業務を遂行し、チームを管理する。・業務管理や調整能力
・問題解決のための判断力
・各スタッフの育成能力
主任日常業務を担当し、部下の指導やチームのリーダーとして、計画的に業務を推進する。・実務遂行能力
・部下を指導する教育力
・チームをまとめる力
副主任日々の業務を進めながら、部下の支援やフォローを行い、チーム全体の調整役を務める。・業務の実行力
・改善の提案力
・チーム内での調整能力

2つ目に、離職者を減らす対策としてのキャリアパスを紹介します。

このキャリアパス作成例は、介護職員の役職ごとに求められるスキルや職務内容が明確になっているのが特徴です。
このようなキャリアパスを作成することで、職員自身で昇進の機会を視覚的に理解できるようになります。

職員が自ら成長してキャリアを形成できるため、職員は将来への不安が軽減され、長期的に働き続けるモチベーションが湧くのです。

これに加えて、研修やOJTを通じて日常的に職員のスキルアップを行うと、より離職を防止する効果が高まります。
適切にキャリアパスを示したり成長する機会を与えたりすることで、職員は「この職場で役職を高めたい」と感じるようになるでしょう。

職員の定着率が向上すると、結果的に事業所全体としてサービスの質も高まること間違いなしです。

3、要件の到達状況を判断する評価シート

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評価項目よくできるできるもう少し
リーダーシップチーム全員が力を発揮できるようにサポートしているチームをまとめ、指示を適切に出しているチームをまとめるのに少し苦労している
マネジメントメンバーを適切に割り振り、成長をサポートしているメンバーの能力や特性を把握しているメンバーの理解が深まっていない
問題解決能力問題をすぐに見つけて解決し、今後に活かせる対策も考えている問題を見つけて解決できる問題を見つけて解決するのに少し時間がかかる
情報収集能力必要な情報を素早く集め、効果的に活用している新しい情報を集めている日々の情報収集ができていない
接客対応力相手の気持ちをよく理解し、期待以上の対応ができるお客様に丁寧に対応し、満足してもらっているお客様への対応がスムーズではない

3つ目に、役職を上げるために必要な能力をどれほど獲得できているかを評価するシートをご紹介します。

例として、この評価シートでは以下の5つを評価項目として取り上げました。

  • リーダーシップ
  • マネジメント
  • 問題解決能力
  • 情報収集能力
  • 接客対応力

それぞれの評価項目について、どのレベルで達成できたかという判断基準を提示しています。
3段階に分けて評価することで、職員は自分の強みと課題を適切に認識し、改善することが可能です。

このように客観的な評価シートを作成することで、役職決定についての透明性と信頼性を高められるでしょう。

4、未経験の人材を育てるためのキャリアパス

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役職具体的な業務経験年数給与水準(円)
初級スタッフ・情報共有しながらのケアの提供
・介護記録の作成
・バイタルチェック
・送迎
・地域との調整
・緊急対応
1~3年170,000~190,000
中堅スタッフ・行事の企画
・後輩の指導
・機器の使用方法指導
・リスクマネジメント
・マニュアル整備
4~5年175,000~205,000
ベテランスタッフ中堅スタッフ職の業務に加え、さらに高い水準で業務を実施し、施設全体の業務改善を推進する6年以上180,000~220,000
指導職(主任)中堅スタッフの指導や教育を担当し、施設全体の業務の見直しや改善をリードする4年以上200,000~220,000
管理職(管理者)事業所の運営全般を管理し、予算管理や人材育成を含めた全体管理業務を実施する6年以上220,000~

4つ目に、未経験の人材を育てるためのキャリアパスをご紹介します。

この表では、初級スタッフからベテランスタッフ、さらには管理職までの段階を明確に示しているのが特徴です。

未経験の人材にとっては、何をすればキャリアアップできるのかが簡単に分かりません。
そのため、キャリアパスの全体像を明確に示すことで、効率的に成長することができます。

たとえば、初級スタッフの1〜3年間は基礎的な業務を行いながら、他のスタッフの動きを参考にする期間です。
それから、中堅スタッフになると後輩の指導が求められるようになり、ベテランスタッフに進むと施設全体の業務改善が必要となります。

このように段階ごとにキャリアパスを示すことで、未経験の人材でもモチベーションを維持しながら成長できる仕組みです。

具体的な業務や給与水準などは、事業所の規模やニーズに応じて柔軟に設計してみてください。

5、人材育成を促進するための評価シート

5つ目に、人材育成を促進するための評価シートをご紹介します。

この作成例で特に重要なのは、一次考課者と二次考課者が分かれている点です。

一般的な評価シートは管理者が、各項目に沿って評価することが多いと思います。
しかし、一次考課者として、管理者以外の人が他のスタッフを評価する仕組みです。

他のスタッフを評価するため「自分が評価されるときはこの部分に気をつけよう」という考えが生まれます。
評価者の気持ちを知ってもらうことで、スタッフに自己成長を促すことができる面白いプロセスです。

また、加算項目として、介助技術とは別に、施設独自の評価基準をつくっている点も参考になります。
シフトに協力的であったり挨拶をきちんとしたりするスタッフは、施設にとって貴重な人材です。

素敵な点を評価する基準を設定することで、職員としても「これからも頑張ろう」とモチベーションに繋がります。

このように、施設側が求める人材水準まで自主的に育ってくれる仕組みができると、経営の安定性が高まるでしょう。

まとめ

この記事では、介護事業所におけるキャリアパスの作成例を紹介しました。

介護のキャリアパスとは、介護職員がキャリアアップする際に参考となる道筋です。
納得感のある形でキャリアパスを作成できると、職員の成長と組織の発展を同時に達成できます。

キャリアパスを作成する際は、以下3つのステップで行いましょう。

  1. 組織で重視することを明確にする
  2. 役職ごとに職務内容を設定する
  3. 役職ごとに必要な能力を定義する

また、介護事業所のキャリアパスや評価シートの作成例も5つ紹介しました。
あなたの施設で求める人材水準まで育つように、ぜひ参考にしてください。

最後までご覧いただきありがとうございました。

こちらの記事では、介護施設のOJTに使えるチェックリストのテンプレートを配布しています。

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