この記事は、以下のような方にオススメです。
- 介護離職が起こる根本的な原因を知りたい
- 介護離職のメリット・デメリットを整理したい
- 介護離職を防ぐための解決策を見つけたい
少子高齢化が進む日本において、介護離職は大きな社会問題となっています。
仕事と介護を両立するのが難しく、やむを得ず介護離職に至る人が後を絶ちません。
しかし実際には、介護離職を防ぐ方法がたくさん存在するものの、知られていないのが現状です。
この記事では、介護離職が増加する背景や、介護離職のメリット・デメリットを分かりやすく解説します。
介護離職とは?
介護離職とは、家族の介護に専念する必要から、やむを得ず仕事を辞めてしまうことです。
介護では日中の生活補助が求められますが、フルタイムで働いている場合は対応できません。
そのため、仕事との両立を諦めてしまい、本人も望まないまま離職に至ってしまうのです。
特に少子高齢化社会である日本では、親の介護が必要となる現役世代が増えています。
70〜80代で介護が必要になるケースが多く、これに対応するのは40〜50代の働き盛りの世代です。
しかし、40〜50代のタイミングで離職してしまうと、生涯年収や年金にも大きく影響します。
また、企業にとっても、管理職などの経験豊富な人材を失うことは深刻なリスクです。
介護で離職する人は増加傾向
介護によって離職する人は増加傾向にあり、今後も減少する見込みは低いと考えられます。
以前はパートタイム労働者の介護離職が、正規雇用者よりも多い傾向にありましたが、2010年頃からその差は縮小し、近年では正規雇者の方が離職していることが明らかになっています。
また、総務省の調査結果によると、2022年時点で629万人いる介護者のうち半数以上(365万人)が仕事と介護を両立しているようです。
2025年には、団塊の世代が全員75歳以上となり、少子高齢化の進行に伴って、働きながら介護を行う人はさらに増加すると予想されます。
介護離職が起こる理由
介護離職が起こる根本的な理由は、仕事と介護を両立させることの難しさです。
その中でも、原因を分解すると大きく3つに分けられます。
- 介護を理由に、仕事を休業できる制度を知らない
- 休業制度を知っていても、現実的に利用できない
- 介護の負担を減らすサービスがあることを知らない
まず1つ目の理由に、仕事を休むことができる制度を知らないという方が多いです。
総務省の調査では、介護している方の60%以上が「休業制度を知らない」と回答しています。
知るだけでも介護離職を防ぐ第一歩になるため、この制度については下部で解説します。
次に、休業制度を知ってはいるものの、現実的に利用しづらいというのも介護離職が起こる原因の一つです。
雰囲気的に休みづらかったり、重要な業務を担っていると代わりのメンバーがいなかったりします。
このような環境で制度が形骸化し、制度の利用率は約10%にとどまっているのが現状です。
3つ目に、介護の負担を減らすサービスの認知が進んでいないことも要因の一つだと言えます。
この後で紹介しますが、実は介護を楽にするサービスがたくさん出てきているのです。
介護を楽にするサービスを紹介
ここでは、仕事と介護を両立しやすくなるような、介護を楽にできるサービスを紹介します。
たとえば、ベッド上で漏らさないよう、3時間おきにオムツを交換するのは大変ですよね。
しかし、ベッドに敷くだけで排泄のタイミングを検知できるセンサーを使えば、オムツ交換はとても楽になります。
他にも、認知症の方が夜に徘徊したというニュースを見たことがある方も多いのではないでしょうか?
手当たり次第探すとなると大変ですが、GPSで居場所が特定できるサービスを使えば簡単に見つけられるのです。
このように、あまり知られていないだけで介護を楽にする方法は実はたくさんあります。
もし「この介護の悩みも、楽になるのかな?」と感じたときは、ぜひ「ラクカイゴ」の公式ページを開いてみてください。
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介護離職が引き起こす問題
介護離職は、一時的な問題だけでなく、連鎖的にさまざまな問題を引き起こします。
具体的には、経済的損失、社会的な孤立感、再就職の難しさなどです。
そのため、精神的に追い詰められて離職に踏み切る前に、冷静にメリットとデメリットを整理する必要があります。
また、実際に介護離職を経験した方の声も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
介護離職は、人生設計全体に関わる大きな決断になるため、慎重に判断しましょう。
介護離職のメリット・デメリット
介護離職は、仕事を辞めて介護に専念できるため、一見すると魅力的に思えます。
しかし、実際にはさまざまなメリット・デメリットが存在するため、正しく理解することが大切です。
〈メリット〉
- 仕事のストレスがなく、心身の負担を軽減できる
- 家族が希望するような介護を提供しやすくなる
- 外部の介護サービスに支払う費用を軽減できる
〈デメリット〉
- 仕事で得ていた収入がなくなり、経済的に不安定になる
- 必要な介護が増えると、自由な時間が確保できなくなる
- キャリアが途絶え、再就職・社会復帰が難しくなる
介護離職によって仕事との両立が必要なくなると、十分な時間を介護に充てられることはメリットです。
また、家族の希望に沿った介護がしやすくなり、きめ細やかなケアを実現できます。
その一方で、日常が介護のみになると、社会との繋がりが薄くなり、精神的なストレスや孤独感などメンタル面のリスクがあることも忘れてはいけません。
他のメリットとしては、外部の介護サービスに支払っていた金額を減らすことができるというポイントも挙げられます。
しかし長期的に見ると、家族の状態が悪化した場合でも、収入がなくなったために介護サービスを利用できず、介護の負担が大きくなってしまう点はデメリットです。
さらに、離職すると退職金や年金も大幅に減少しますし、一度キャリアが途絶えると再就職が難しくなるというデータもあります。
介護離職は良かった?後悔してない?
ここでは、実際に介護離職を経験した方のリアルな声を参考に、メリット・デメリットを考えてみましょう。
32歳で介護離職をした女性は、介護離職を「良かった」と振り返っています。
その理由は、介護に専念する中で、自分の生き方を見つめ直す時間を得られたことです。
以前から感じていた「仕事を失うと自分は何者でもない」という不安が解け、「何もしなくても自分には価値がある」と肯定的に捉えられたのでした。
参考:東洋経済オンライン「32歳で介護離職した彼女がむしろ幸福そうな理由」
一方で、介護離職をした40代女性は「後悔している」と話しています。
この女性は、両親と職場の板挟みに苦しみ、仕事を辞める決断をしました。
しかし、収入や退職金・年金が減少したのを感じて「早まった、なんてことをしてしまったんだろう」と後悔していると言います。
また、介護離職が「家族のための選択」である一方で、両親からはさらなる介護を求められるようになり、負担が軽減されるどころか大きくなったという状況も見られます。
厚生労働省が発表したデータでも、精神面・肉体面・経済面のすべてにおいて「離職後に負担が増した」という回答割合が高くなっています。
参考:Yahoo!ニュース「『今も将来も貧困』になる現実 早まって介護離職した40代女性の後悔」
介護離職を防止する解決策
介護離職を防止するために、国は仕事と介護を両立できる制度を整備しています。
具体的には、以下のような休職制度を利用可能です。
- 介護休業制度:給付金を受けながら、通算93日間は仕事を休める制度
- 介護休暇制度:突発的な介護に対応するため、1年に5回まで仕事を休める制度
- 労働時間制限:残業や時間外労働、深夜業を制限する制度
まず、介護休業制度は、介護をするために一定期間仕事を休める制度です。
この制度を活用すれば、仕事から離れて家族の介護に集中する時間を確保できます。
この期間に、仕事と介護を両立するための体制を整えることで、負担を大幅に減らせるでしょう。
なお、休業期間中は給付金を受けられるため、収入がストップする心配もありません。
次に、介護休暇制度は、一時的に仕事を離れて、家族の介護に対応できる制度です。
たとえば、病院への送迎や介護サービスの手続きなどがある際に仕事を抜けられます。
最後に、労働を制限する制度は複数あり、仕事の時間を減らすことが可能です。
具体的には、残業を免除したり法定外労働時間を「1ヶ月につき24時間まで」のように制限できます。
また、深夜業の制限として、午後10時から午前5時までの労働を免除する制度も。
それぞれの休職制度について、対象となる条件などを詳しく解説していますので、こちらの記事も合わせてご覧ください。
【Q&A】よくある質問
ここからは、介護離職に関する「よくある質問」に回答します。
- 介護離職には、失業保険が適用される?
- 介護離職に関する助成金はある?
- 介護離職で無職になっても再就職できる?
介護離職には、失業保険が適用される?
介護を理由に仕事を辞めた場合、一定の条件を満たせば失業保険を受けることができます。
失業保険を受けるには、ハローワークで「特定理由離職者」と認められることが必要です。
介護離職における特定理由離職者とは、「介護があるため、働けるような状況ではない」という人が該当します。
特定理由離職者かどうかの審査では、家族の状態や住んでいる場所など、複合的に判断されます。
そのため、まずは自身の状況をハローワークに相談することで、条件に該当するかどうかが分かるでしょう。
介護離職に関する助成金はある?
介護離職に関する助成金としては、企業向けのものが主になります。
企業向けの代表的な助成金は「介護離職防止支援助成金」です。
この助成金は、従業員が介護休業などの制度を利用できるような環境を整えた企業に対して支給されます。
他方で、個人向けには、介護に関する費用を軽減する支援制度が利用可能です。
たとえば、介護保険を利用すると、自己負担額を減らして介護サービスを利用できます。
介護について知りたいときは、地域包括支援センターに相談しに行くのがオススメです。
介護離職で無職になっても再就職できる?
介護のために離職するとき、その後の再就職に不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
実際に、2019年に内閣府が発表したデータでは、介護離職した人の再就職率は全体の3割にとどまっているのが現状です。
加えて、年齢が上がるほど再就職が難しくなるというデータも示されています。
また、介護離職で無職になった人の多くが就業を希望しているものの、実際に求職できている人は半分もいません。
つまり、一度介護離職してしまうと、時間的・精神的・社会的などの要因から、再就職は難しいことが考えられます。
特に、離職期間が長期化する場合、前職が正規雇用であっても、再就職後は非正規雇用に変わるケースも多いです。
【まとめ】介護離職しないために
この記事では、介護離職しないために、介護離職が起こる背景や問題点を解説しました。
仕事と介護を両立できず、やむを得ず介護離職してしまう人は増加傾向にあります。
介護離職が起こる仕組みを分解すると、以下の3つが原因です。
- 介護を理由に、仕事を休業できる制度を知らない
- 休業制度を知っていても、現実的に利用できない
- 介護の負担を減らすサービスがあることを知らない
また、介護離職をするメリット・デメリットも整理しました。
〈メリット〉
- 仕事のストレスがなく、心身の負担を軽減できる
- 家族が希望するような介護を提供しやすくなる
- 外部の介護サービスに支払う費用を軽減できる
〈デメリット〉
- 仕事で得ていた収入がなくなり、経済的に不安定になる
- 必要な介護が増えると、自由な時間が確保できなくなる
- キャリアが途絶え、再就職・社会復帰が難しくなる
実際のデータでは、介護離職した後の方が「負担が増えた」と回答する割合が高く、介護離職を後悔する人が多いと言えます。
そのため、介護離職を防止するために、仕事と介護を両立できる制度を紹介しました。
- 介護休業制度:給付金を受けながら、通算93日間は仕事を休める制度
- 介護休暇制度:突発的な介護に対応するため、1年に5回まで仕事を休める制度
- 労働時間制限:残業や時間外労働、深夜業を制限する制度
休業制度や介護を楽にするサービスを上手く活用し、できる限り介護離職をしないようにしましょう。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。