介護事業者の中には「入浴介助加算の算定を検討している」「計画書のテンプレートが欲しい」という方もいると思います。
この記事では、入浴介助加算の基本的な概要から、(Ⅰ)と(Ⅱ)の具体的な算定要件の違い、新たに追加された研修要件や計画書の作成方法まで分かりやすく解説します。
この記事を読めば、入浴介助加算の全容を知ることができますので、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
入浴介助加算とは?

入浴介助加算とは、通所介護事業所において、入浴中の利用者の観察を含む介助を行った場合に、1日1回算定できる加算のことです。
対象となる通所介護事業者は、以下になります。
- 通所介護
- 通所リハビリテーション
- 地域密着型通所介護
- 認知症対応型通所介護
2024年介護報酬改定における入浴介助加算の変更点
2024年の介護報酬改定における入浴介助加算の主な変更点は以下の通りです。
【入浴介助加算(Ⅰ)】
研修要件の追加
- 算定要件に「入浴介助に関わる職員に対し、入浴介助に関する研修等を行うこと」が追加されました。
※外部研修・内部研修のどちらも認められていますが、研修の記録を保管しておくことが必要です。
【入浴介助加算(Ⅱ)】
居宅訪問時の情報機器活用が可能に
- 医師等による利用者宅の浴室環境評価が難しい場合、介護職員がICT機器を活用して状況を把握し、医師等が評価・助言することが可能になりました。
なお、単位数の変更はなく、入浴介助加算(Ⅰ)は40単位/日、入浴介助加算(Ⅱ)は55単位/日(通所リハビリテーションは60単位/日)のままです。
※ただし、(Ⅰ)と(Ⅱ)を同時に算定することはできません。
入浴介助加算の算定対象者
入浴介助加算の算定対象者は、主に以下の条件を満たす利用者です。
- 要介護認定者
要介護認定を受けた利用者が対象です。要支援認定しか受けていない場合は対象外になります。 - 通所介護サービスの利用者
入浴介助加算は、通所介護(デイサービス)や通所リハビリテーション、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護のうち、いずれかのサービスを利用している高齢者に算定されます。 - 入浴に支援が必要な状態であること
利用者が日常生活において入浴を単独で行うことが困難であり、介助を必要とする状態であることが条件です。
入浴介助加算の算定要件

入浴介助加算は、(Ⅰ)と(Ⅱ)の2種類に分かれており、それぞれ異なる単位数と算定要件があります。
入浴介助加算(Ⅰ)の算定要件
入浴介助加算(Ⅰ)の算定要件は、以下の通りです。
- 適切な人員と設備の確保
入浴介助を適切に行うことができる人員(※)及び設備を有していることが求められます。 - 通所介護計画に基づく介助
利用者の通所介護計画に基づいて入浴介助を行う必要があります。なお、この計画には、入浴に関する具体的な内容が記載されていることが条件です。 - 入浴介助に関する研修の実施
入浴介助に関わる職員に対して、入浴介助に関する研修等を行う必要があります。(2024年の介護報酬改定にて追加された項目) - 観察を含む介助の実施
入浴中の利用者の観察を含んだ介助を行うことが必要です。身体に直接接触する介助を行わずとも、見守りや声かけなどの支援があれば算定対象となります。 - 利用者の状態に応じた介助
利用者が自力で入浴できるように支援することを基本とし、必要に応じて介助を行うことが大切です。
これらの要件を満たすことで、入浴介助加算(Ⅰ)を算定することが可能です。
入浴介助加算(Ⅱ)の算定要件
入浴介助加算(Ⅱ)の算定要件は、以下の通りです。
- 入浴介助加算(Ⅰ)の算定要件を満たしていること
前提として、入浴介助加算(Ⅰ)の算定要件を満たしていることが必要です。 - 居宅訪問による評価
利用者の居宅を訪問し、浴室における利用者の動作及び浴室の環境を評価(※)する必要があります。 - 環境整備に関する助言
訪問した医師等が、居宅介護支援事業所の介護支援専門員や福祉用具専門相談員と連携し、浴室の環境整備に関して助言することが必要です。
特に、利用者自身または家族等の介助による入浴が難しい場合に重要になります。 - 個別の入浴計画の作成
機能訓練指導員等が、医師等と連携し、利用者の身体の状況や居宅の浴室の環境を踏まえた個別の入浴計画を作成する必要があります。
なお、この計画は通所介護計画に記載することも可能です。 - 入浴計画に基づく介助の実施
作成した入浴計画に基づき、個浴や利用者の居宅の状況に近い環境で入浴介助を行う必要があります。 - 情報通信機器等の活用
医師等による居宅訪問が困難な場合は、介護職員が訪問し、情報通信機器等を活用して状況を把握し、それをもとに医師等が評価・助言を行うことも可能です。(2024年の介護報酬改定にて追加された項目)
これらの要件を満たすことで、入浴介助加算(Ⅱ)を算定することができます。
算定にあたっては、利用者の自立を促進することが目的とされています。
各通所サービスにおける入浴介助加算の単位数
各通所サービスにおける入浴介助加算の単位数は、以下の通りです。
サービス | 入浴介助加算(Ⅰ) | 入浴介助加算(Ⅱ) |
---|---|---|
通所介護(デイサービス) | 40単位 / 1日あたり | 55単位 / 1日あたり |
通所リハビリテーション | 40単位 / 1日あたり | 60単位 / 1日あたり |
地域密着型通所介護 | 40単位 / 1日あたり | 55単位 / 1日あたり |
認知症対応型通所介護 | 40単位 / 1日あたり | 55単位 / 1日あたり |
【例】入浴介助加算の計画書

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入浴介助加算に関する計画書では、具体的な記載内容や形式が定められていません。
そのため、独自に作成する際は、以下のような項目を含む個別入浴計画を作成することが望ましいです。
- 利用者の基本情報(氏名、年齢、要介護度など)
- 身体的な状況(疾患の有無、入浴時の注意事項、医師の指示など)
- 自宅の浴室環境(浴槽との段差、浴室までの住居環境など)
- 入浴に関する目標(短期目標、長期目標など)
- 具体的な介助内容(自立支援のためのアドバイスなど)
これらの項目を含む計画書を作成することで、入浴介助加算の算定要件を満たすことができます。
入浴介助加算のよくある質問
最後に、入浴介助加算に関する「よくある質問」を2つご紹介します。
- シャワー浴、足浴、清拭は算定できる?
- 入浴介助加算(Ⅰ)の算定要件にある研修内容とは?
Q、シャワー浴、足浴、清拭は算定できる?
入浴介助加算は、入浴・シャワー浴のみ算定可能です。
足浴、清拭は算定不可になります。
Q、入浴介助加算(Ⅰ)算定要件の研修内容とは?
研修の形式や頻度に関しては、厳格な規定は設けられておらず、内部研修でも外部研修でも構いません。
ただし、入浴介助技術の向上を目的として、継続的に研修の機会を確保し、研修内容を記録しておく必要があります。
以下は、厚生労働省の回答を引用したものです。
問60:入浴介助に関する研修とは具体的にはどのような内容が想定されるのか。
引用:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)」
(答)
・具体的には、脱衣、 洗髪、 洗体、 移乗、 着衣など入浴に係る一連の動作において介助対象者に必要な入浴介助技術や転倒防止、 入浴事故防止のためのリスク管理や安全管理等が挙げられるが、これらに限るものではない。
・なお、これらの研修においては、内部研修・外部研修を問わず、入浴介助技術の向上を図るため、 継続的に研修の機会を確保されたい。
入浴介助加算の算定要件を正しく理解しよう
この記事では、入浴介助加算について詳しく解説しました。
入浴介助加算とは、通所介護事業所において、入浴中の利用者の観察を含む介助を行った場合に、1日1回算定できる加算のことです。
2024年度の介護報酬改定では、以下の2点が変更されました。
- 入浴介助加算(Ⅰ):入浴介助に関する研修が追加
- 入浴介助加算(Ⅱ):居宅訪問時の情報機器活用が可能に
なお、単位数の変更はなく、入浴介助加算(Ⅰ)は40単位/日、入浴介助加算(Ⅱ)は55単位/日(通所リハビリテーションは60単位/日)のままです。
また、入浴介助加算に関する計画書のテンプレートもお配りしていますので、ぜひご活用ください。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。