この記事は、以下のような方におすすめです。
- 個別機能訓練加算の概要を知りたい
- 通所介護の個別機能訓練加算の算定要件が知りたい
- 算定のための流れを知りたい
通所介護で個別機能訓練加算の算定を打診されたものの、「何から始めればよいのかわからない」という方もいるのではないでしょうか。
個別機能訓練加算の算定により、利用者の生活機能の維持・向上が見込まれ、自立支援や生活の質の向上が期待できます。
今回は通所介護の個別機能訓練加算について、算定要件や必要な流れ、注意したい点などについて詳しく解説します。
個別機能訓練加算とは

個別機能訓練加算とは、利用者一人ひとりの生活機能を維持・向上させるため、積極的な機能訓練を提供する事業所を評価する加算です。
算定するには、理学療法士や作業療法士などの資格をもつ機能訓練指導員が、利用者ごとの「個別機能訓練計画書」にもとづいて訓練を行う必要があります。
機能訓練指導員とは、以下の資格を持つ人のことです。
- 理学療法士
- 作業療法士
- 言語聴覚士
- 看護師・准看護師
- 柔道整復師
- あん摩マッサージ指圧師
- はり師・きゅう師
個別機能訓練加算を算定できる介護サービス
通所介護以外にも、個別機能訓練加算を算定できる介護サービスがいくつかあります。
介護サービスの種類と加算の区分、単位数を一覧表にしましたので、参考にしてください。
介護サービスの種類 | 個別機能訓練加算の区分・単位数 |
---|---|
・通所介護 ・地域密着型通所介護 | (Ⅰ)イ:56単位 / 日 (Ⅰ)ロ:76単位 / 日 (Ⅱ):20単位 / 月 |
・短期入所生活介護 ・介護予防短期入所生活介護 | 56単位 / 日 |
・特定施設入居者生活介護 ・介護予防特定施設入居者生活介護 ・地域密着型特定施設入居者生活介護 | (Ⅰ):12単位 / 日 (Ⅱ):20単位 / 月 |
・介護老人福祉施設 ・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 | (Ⅰ):12単位 / 日 (Ⅱ):20単位 / 月 (Ⅲ):20単位 / 月 |
・認知症対応型通所介護 ・介護予防認知症対応型通所介護 | (Ⅰ):27単位 / 日 (Ⅱ):20単位 / 月 |
通所介護の個別機能訓練加算の算定要件
通所介護で個別機能訓練加算を算定するための要件を解説します。
前述した通り、加算は大きく分けて(Ⅰ)と(Ⅱ)の2種類があり、(Ⅰ)は配置する機能訓練指導員の数に応じてイとロに分かれます。
(Ⅱ)は厚生労働省へのデータ提出を行うことで、(Ⅰ)に上乗せして算定できる加算です。
個別機能訓練加算(Ⅰ)イ・ロの算定要件
まずは個別機能訓練加算(Ⅰ)の要件について、イとロの違いを中心に解説していきます。
個別機能訓練加算(Ⅰ)イ | 個別機能訓練加算(Ⅰ)ロ | |
---|---|---|
単位数 | 56単位 / 日 | 76単位 / 日 |
対象者 | 要介護1~5の利用者 | |
機能訓練指導員の配置 | 専従1名以上 (配置時間の定めなし) | イに加えて専従1名以上 (配置時間の定めなし) |
訓練内容 | 5人程度以下の小集団または個別にて、利用者の生活機能の維持・向上に向けた積極的な機能訓練を実施する | |
訓練の実施者 | 機能訓練指導員が直接実施すること | |
注意点 | ・イとロは併算定ができない ・人員欠如減算・定員超過減算を算定している事業所は、個別機能訓練加算が算定できない ・イは、運営基準上の配置要件である機能訓練指導員により満たせる |
ポイントは、(Ⅰ)ロの要件が緩和されたことです。
これまで2人目の機能訓練指導員は、提供時間帯を通じての配置が必要でしたが、その時間の定めがなくなりました。
単位数は85単位から76単位に引き下げられましたが、配置要件が柔軟になったことで算定しやすくなっています。
個別機能訓練加算(Ⅱ)の算定要件
(Ⅱ)は月20単位の加算で、(Ⅰ)に加えて以下の要件を満たす必要があります。
- 個別機能訓練加算(Ⅰ)イまたはロを算定している要介護1~5の利用者であること
- 個別機能訓練計画書をLIFE(科学的介護情報システム)を活用し提出すること
- LIFEからのフィードバックを活用し、PDCAサイクルを回すこと
LIFEを活用すると、利用者の課題をより正確に把握でき、科学的根拠にもとづいた効果的な訓練が提供できます。
これにより質の高いケアが実現でき、利用者の自立支援をより促進できるでしょう。
個別機能訓練加算を算定する流れ

算定は、以下7つのステップで進めます。
自治体へ届出をする
利用者とその家族・ケアマネジャーへ説明する
利用者宅を訪問する
個別機能訓練計画書を作成する
利用者またはその家族へ説明し同意を得る
個別機能訓練の実施と記録をする
個別機能訓練実施後に評価・報告する
1、自治体へ届出をする
まず初めに、自治体への届出が必要になります。
届出の際には、以下の書類を準備しましょう。
- 介護給付費算定に係る体制等状況一覧表
- 介護給付費算定に係る体制等に関する届出書
- 加算適用開始月の「従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表」
- 機能訓練指導員の資格証
上記は東京都福祉局に記載されているものですが、必要書類は自治体によって若干異なることがあります。
事前に自治体のホームページを確認する、もしくは直接問い合わせて、必要書類を把握しておくとよいでしょう。
2、利用者とその家族・ケアマネジャーへ説明する
次に、加算の算定には、利用者の同意が必須です。
また、担当ケアマネジャーにも算定の理由や必要性を説明し、ケアプランへの記載を依頼する必要があります。
サービス担当者会議にて、他のサービス事業者とも情報共有をしておきましょう。
3、利用者宅を訪問する
算定するためには、利用者宅を訪問し、生活状況の確認や生活上の課題を把握する必要があります。
以下の2種類のチェックシートを活用し、各項目について確認しましょう。
【生活機能チェックシート】
自立度、課題の有無、環境(実施場所や使用する補助具等)、状況や課題などを記載します。
- ADL(食事、移乗、整容、トイレ動作、入浴、平地歩行、階段昇降、更衣、排便コントロール、排尿コントロール)
- IADL(調理、洗濯、掃除)
- 起居動作(寝返り、起き上がり、座位、立ち上がり、立位)
【興味関心チェックシート】
ADLやIADL、趣味、仕事などの生活行為の実施状況や、興味・関心の有無を以下のように記載します。
- 現在しているものには「している」の列に〇をつける
- 現在していないが、してみたいものには「してみたい」の列に〇をつける
- する(できる)・しない(できない)にかかわらず、興味があるものには「興味がある」の列に〇をつける
4、個別機能訓練計画書を作成する

個別機能訓練計画書とは、生活機能の維持・向上のために個々の利用者に合わせて作成する計画書です。
居宅訪問時に確認した生活状況や生活上の課題、興味・関心などを参考にして目標や訓練プログラムを立案します。
そして、この計画にもとづいて機能訓練を提供します。
計画書の具体的な記載項目は、以下のとおりです。
【利用者の基本情報】
- 本人・家族の希望
- 社会参加の状況
- 居宅環境
- 病名や治療経過
- 訓練における留意事項
【個別機能訓練の目標・個別機能訓練項目の設定】
- 機能訓練の短期目標(今後3か月)
- 機能訓練の長期目標
- 個別機能訓練項目(何のために、どのような訓練をするのか具体的に記載する)
- サービス利用時間以外にも利用者や家族が主体的に取り組むべき内容
【個別機能訓練実施後の対応】
- 訓練の実施による変化
- 実施における課題とその要因
5、利用者またはその家族へ説明し同意を得る
作成した計画書は、利用者や家族にわかりやすく説明し、同意を得る必要があります。
計画書は必ず書面で交付し、担当ケアマネジャーにも交付して同意を得た旨を報告しましょう。
6、個別機能訓練を実施して記録する
個別機能訓練は、目標が似通った利用者の小集団(5人以下)か、1対1で実施されます。
実際の生活場面を想定した動作練習を、事業所内外の適切な環境で実施することが重要です。
訓練にかかる時間は、個々の訓練項目に必要な時間を考慮し、適切に設定します。
また、生活機能の維持・向上のため継続的に実施し、頻度は週1回以上が目安です。
記録の際は以下の項目を必ず含めましょう。
- 実施時間(例:10時20分~10時45分)
- 訓練内容(筋力強化訓練、起立訓練、立位バランス訓練など)
- 担当者名
7、個別機能訓練実施後に評価・報告する
「目標に対する訓練項目や訓練の実施時間が適切であったか」「訓練の効果(ADLやIADLの改善状況)が現れているか」などについて評価します。
利用者の居宅を3か月に一回以上の頻度で訪問し、以下を行ってください。
- 利用者の生活状況を確認する
- 訓練の実施状況や効果を、本人や家族に説明する
- 訓練の実施状況や効果について記録する
個別機能訓練加算の算定で注意したいこと

最後に、個別機能訓練加算を算定するうえで、注意したいことを3つご紹介します。
- 定期的な訪問を確実に行う
- 加算(Ⅰ)イとロは併算定できないことを押さえる
- 加算(Ⅱ)を算定する場合はLIFE活用の準備をする
定期的な訪問を確実に行う
3か月に1回以上の居宅訪問は、業務の多忙さから負担に感じることもあります。
しかし、居宅訪問は算定要件のひとつなので、工夫して確実に実施しましょう。
具体的には、サービス担当者会議や送迎のタイミングで行うのがおすすめです。
特に担当者会議では、他のサービス事業者からの情報も参考になるため、より多角的な視点で課題を把握できるメリットがあります。
なお、居宅を訪問する職員は、機能訓練指導員以外でも認められており、個別機能訓練計画書の作成に関わる職員であればよいとされています。
加算(Ⅰ)イとロは併算定できないことを押さえる
繰り返しになりますが、個別機能訓練加算(Ⅰ)のイとロの算定要件の違いは、人員配置によるものです。
機能訓練指導員が2人以上いる時間帯に行った場合は、利用者に(Ⅰ)ロを算定できますが、1人の時間帯に行った場合は(Ⅰ)イを算定します。
営業日や時間帯などによって機能訓練指導員の配置数が変化する事業所は、その体制についてあらかじめ利用者に説明しておく必要があります。
(Ⅱ)を算定する場合はLIFE活用の準備をする
個別機能訓練加算(Ⅱ)を算定するには、LIFEへの情報提供が必要です。
算定を検討する際は、LIFEを利用できる環境を事前に整備しておきましょう。
LIFEの導入には、以下の準備が必要です。
- システムの利用申し込み
- LIFE起動アイコンのダウンロード
- 事業者基本情報の登録(システムの管理ユーザーと操作職員)
事業所で使用している介護ソフトがLIFEのデータベースに対応している場合、CSVファイルを出力してデータの提出が可能です。
一方で、介護ソフトがLIFEに対応していない場合は、システムへ直接データを送信する必要があります。
どちらの方法で提出するにしても、一定の操作方法や提出する情報などは最初に覚えなければなりません。
事業所内で定期的に勉強会をするなどして、備えておきましょう。
まとめ
この記事では、通所介護の個別機能訓練加算について解説しました。
主なポイントは以下のとおりです。
- 個別機能訓練加算は、利用者の生活の質を高める重要な役割を担っている
- 加算(Ⅰ)イ・ロと(Ⅱ)は、人員配置やLIFEへの情報提出の有無などによって区分される
- 必要書類の提出や居宅訪問、計画書の作成を確実に行うことが大切である
個別機能訓練加算の算定に向けて準備を進めている方は、ぜひ参考にしてみてください。
最後までご覧いただきありがとうございました。