この記事は以下の悩みを持つ方にオススメです。
- 人手不足で労働環境が過酷…。疲弊する前になんとか改善したい!
- 先輩に不正を黙認するよう言われたけれど、このままでいいの?
- 内部告発したら自分に不利益が生じないか怖くてできない。
この記事では、介護施設などで発生している不正を内部告発する方法を分かりやすく紹介します。
介護業界では転職など新しい環境で働き始める方も多いと思いますが、理想と現場のギャップを感じることもあるのではないでしょうか?
今回は、このようなお悩みの解決法と内部告発のやり方を分かりやすく解説します。
介護業界の不正報告は意外と多い
家族・友人から「介護の仕事は大変じゃない?」と言われることもあるように、いいイメージではないのが現状です。
高齢化社会に必要不可欠で社会に貢献している職業であるのに悲しいですよね。
しかし、実際に介護業界では不正が多いというデータがあります。
2022年度のコンプライアンス違反企業の倒産動向調査では、老人福祉事業を含む「サービス業」が「建設業」・「運輸・通信業」を抜いて全体の3割を占める結果となったことが発表されました。
また、厚生労働省から2021年度の介護保険施設等の指定取り消し・効力停止処分は105件であったことが報告されており、その内容の多くは介護報酬の不正請求です。
介護業界の不正はなぜ多い?
介護業界の不正が多い原因は、社会問題にもなっている「介護業界の慢性的な人手不足」が大きく関わっています。
なかなか職員の採用が決まらず、身体的・精神的疲労などの理由で退職者が出てしまうと日々のサービスは提供できなくなってしまうでしょう。
しかし、人員が足りないこととは関係なく利用者の介護は必要です。
そのような理由から残業時間が増えたり、人員基準を満たしてないのに水増し請求をしたりするなどして事業所の運営継続のために悪循環に入ってしまう事業所が後を絶ちません。
大手企業であっても、営利を目的とする運営方針だと、気付かないうちに自分も不正に手を染めていたなんてことも珍しくないのです。
不正を発見したらどうする?見て見ぬふりするとどうなる?
介護の現場で使命感を持って一生懸命働かれている方の中には、介護報酬の不正受給や時間外労働など介護の現場で行われている不正を目の当たりにして、つらい思いをしている方もいるでしょう。
万が一、自分の職場で不正を発見してしまった場合は、内部告発することが解決策として有効です。
ただ、現状をどうにかしたいと思っても職場の人間関係がうまくいかなくなる不安や、仕返しが怖くて見て見ぬふりをしてしまいたくなりますよね。
このようなときは、どうしてもネガティブな方向に考えてしまうでしょう。
また、後から不正が発覚すると累積した不正が重大な規模になってしまうだけでなく、その場面や状況によっては責任を問われる可能性もあるのです。
最悪の事態としては、不正の規模が大きくなり、事業所の閉鎖や自身も職を失うこともあり得るでしょう。
内部告発を実行するメリットとデメリット
ここまでは、介護現場での不正が多いことや、不正の解決策として内部告発が有効であることを紹介してきました。
しかし、内部告発を行うことのメリットとデメリットを整理した上で行動することが大切です。
そのため、ここでは実際に内部告発を実行するメリットとデメリットについて詳しく解説します。
メリットは、何よりも働きやすくなり、地域社会の信頼を保つことができることです。
過酷な環境で働き続けてもいつかは限界が訪れてしまいます。
整った労働環境で仕事とプライベートを両立させることはとても重要です。
心にゆとりが持てるようになると介護の質が上がり、より良いサービスの提供にも繋がるでしょう。
一方で、デメリットは通報した自身に不利益が生じるリスクがあることです。
通報したことが事業所内の責任者にバレてしまうと、不当解雇や処分を受ける可能性もあります。
それだけではなく、職場の人間関係が悪くなったり仕事しづらくなったりしてしまうこともあるでしょう。
内部告発の実行によるデメリットを回避するための動き方
できることなら内部告発による大きなリスクは回避し、安心してお仕事したいですよね。
内部告発のデメリットで述べたような事態を防ぐためにも「公益情報保護法」という通報者を守る法律があります。
この法律は、不正を通報したことを理由とする不利益な取り扱いを禁止し、不当な処分を受けることから保護されるという法律です。
ただし、保護される条件が定められているため、あらかじめ当てはまるかどうかを確認しましょう。
- 「通報者」:正社員、派遣社員、パート・アルバイト、退職後1年以内の従業員であること
- 「通報内容」:法令違反行為が生じている、または生じようとしている旨を通報すること
- 「通報目的」:他人に損害を与えるなど不正の目的でないこと
- 「通報先」:事業者内部、行政機関、その他事業者外部であること
公益情報保護法には2022年から新たなルールが追加され、より内部告発をしやすい体制が整ってきています。
例えば、通報者の条件に「退職後1年以内の従業員」が追加されたことによって退職金が支給されないなどの不当な処分を心配することなく、退職してからも通報しやすくなりました。
また、刑事罰までの規定はなくても過料の対象となりうる行為についても、通報内容として認められるようになったことで対象となる範囲が拡大されています。
公益情報保護法について、さらに詳しく知りたい方は「消費者庁による公益通報者保護法と制度の概要」をご覧ください。
内部告発のやり方!準備から通報後までの流れを解説
では実際に、内部告発をしようと思ったらまず何から始めればよいのでしょうか?
ここからは、介護業界で内部告発をする流れを細かく解説していきます。
内部告発の流れは、以下の10ステップで分けることができます。
不正発覚
証拠集め
内容の整理
通報先の確認
通報(可能であれば実名)
事実調査
監査
指導・是正勧告
再調査
罰則・書類送検(悪質な場合)
内部告発を行う手順の中で特に重要になるのが、不正であることを証明できる証拠と通報の方法です。
内部告発を受ける側の行政も、通報があったからといってすべての事業所を調査することはありません。
なぜなら、ライバルの事業所が嘘の内容を通報したり、噂程度の段階で通報されたりする事案も少なくないためです。
事実ではないのに事業所へ直接監査に行き間違いであったら、大変なことになってしまうでしょう。
そのため、何らかの対応を取ってもらえるよう事実である証明と、なるべく実名を公表し訴えかけることが大切です。
1、介護報酬の不正受給に関する事例
<事例>
- 退職や産休等で欠員が出ているけれど、人員基準を満たしているかのように装い介護報酬を請求している(水増し請求)
- 休日等実際は勤務していない時間帯に、虚偽のサービス実施記録を作成して請求している
- 実務研修を受けていない職員が、居宅サービス計画作成などの業務を行っている
- インスリン注射や摘便など看護師ではない職員が医療行為を行っている
<該当する可能性がある違法行為>
- 介護保険法第22条(不正利得の徴収等)
- 介護保険法第113条二(法第六十九条の二第一項の厚生労働省令で定める実務の経験)
- 医師法第17条(医師でなければ医業をなしてはならない)
<必要な証拠>
- 介護給付費請求書、領収書
- 録音動画など
通報先は「各都道府県または市町村の相談窓口」です。
以下では、あなたの職場にある都道府県の相談窓口を探す方法を手順に沿って案内します。
消費者庁の「公益通報の通報先・相談先 行政機関検索」のページを開く
トップに表示されている検索バーに「介護」と入力する
介護に関わる法律が一覧で表示されるため、その中から「介護保険法」を選択する
ページ下部の通報先に欄に表示されいている「別添(都道府県)参照」をクリックする
都道府県ごとに通報先の電話番号が一覧で表示されるため、職場の勤務地を管轄している都道府県の通報先へ連絡する
※可能であれば、予約をして直接訪問するのも良い
<通報内容>
- 通報者の氏名・連絡先(匿名でも可能)
- 不正の内容(どんなことが行われているか)
- 不正の時期(いつから行われていて、いつ発見・発覚したか)
- 証明できる証拠(何を根拠に不正であると言えるか)
- 勤務地の所在(どこで、誰が行っているか)
2、労働環境に関する事例
<事例>
- 残業代が出ない
- 有給休暇などの休日が取れない
<該当する可能性がある違法行為>
- 労働基準法第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
- 労働基準法第36条(時間外及び休日の労働)
<必要な証拠>
- 「残業代は出さない」「有給休暇を取らせない」という旨の音声
- 給与明細
- 残業をした証拠となるもの
- 勤務記録
- 雇用契約書、賃金規定、就業規則
通報先は「労働基準監督署」です。
以下では、全国に321署ある労働基準監督署から、あなたの通報先を探す手順を紹介します。
厚生労働省による「全国労働基準監督署の所在案内」というページを開く
都道府県の中から、勤務先の都道府県を選択する
労働局・労働基準監督署・公共職業安定所がそれぞれ表示されるため、労働基準監督署の中から勤務地に近い市区町村を管轄する労働基準監督署を見つける
「案内図」という部分をクリックすると、その労働基準監督署に関連する電話番号を確認できるため、「方面(労働条件、解雇、賃金)」もしくは「監督課の通報先」という電話番号に連絡する
※対応時間は平日の「8:30〜17:15」のみ
<通報内容>
- 通報者の氏名・連絡先(匿名でも可能)
- 現在の労働環境(どんなことが行われていて、どのような被害があるか)
- 期間(いつから行われているか)
- 証明できる証拠(何を根拠に過酷な労務環境であると言えるか)
- 勤務地の所在(どこで、誰が行っているか)
【Q&A】よくある質問
- 「通報しても十分に対応してもらえないのではないか」「労力ばかりかかってしまい解決しなかったらどうしよう」と考えて通報をためらってしまいます。
県の福祉課や労働基準監督署では、どのような案件でも対応してもらえるのでしょうか? -
通報を受けて調査を行わないケースはほとんどありません。
しかし、対応できる事例であっても匿名であったり、連絡先が不明であったりすると優先度が低くなってしまう場合があります。また、証拠や根拠が乏しいと事実関係が確認できずに動いてもらえないという事例もあるでしょう。
そのため、通報する際にはできるだけ実名で直接訪問して、これだけ困っていると訴えかけることが重要です。 - 通報してから連絡がありません。
通報してからどれくらい期間を空けて監査が入りますか? -
通報を受けてから事実確認等を行いますので、約2〜3か月で監査に入ることが多いです。
その期間に確認事項があれば通報者へ連絡があると思いますが、進捗状況などの報告はありません。
監査は原則告知なしで行われるためです。対応してもらえているか不安な場合は、直接または電話で確認してみるとよいでしょう。
まとめ
この記事では、介護業界の内部告発についてメリットやデメリット、やり方について解説しました。
内部告発をするときのポイントは、以下の2つです。
- なるべく早期に不正の根拠となる証拠を集めること
- 実名で直接訪問し悩んでいることを訴えること
初めて内部告発をしようと考えている方は「まず何から手を付けたらいいのか」「どこにどのような内容を通報すればいいのか」を悩む方も多いと思います。
この記事を読むことで、内部告発のハードルが低くなり、働きやすい環境づくりの第一歩を踏み出せると嬉しいです。
介護請求や労働環境などの他に、高齢者の虐待にお困りの方は、ぜひこちらの記事も合わせてご覧ください。
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最後までご覧いただき、ありがとうございました。