この記事は、以下のような方にオススメです。
- 介護休暇と介護休業って、何が違うの?
- どちらの制度を使うのが良いか分からない
- 私は、制度の対象者に入っているかな?
介護休暇と介護休業は名前は似ているものの、内容や用途は大きく異なります。
この記事は、2つの制度の違いを分かりやすく解説し、「あなたに合った制度はどちらか」を知っていただくものです。
介護休暇と介護休業の違いは「休める期間」
介護休暇と介護休業の違いは、主に「休める期間が長いか短いか」という点です。
どちらの制度も、家族の介護をするために会社を休むための法的な制度という点は共通しています。
法律で保証されているため、休んだとしても解雇や降格、減給などの不利益な取り扱いを受ける心配はありません。
2つの制度を用途別に分けると、以下のようになります。
- 介護が急に必要になったので、1日だけ休みたい→「介護休暇」
- 長期の介護が必要で、1ヶ月ほど仕事を離れたい→「介護休業」
以下の章では、それぞれの制度で取得できる休みの日数や、利用条件、申請方法を紹介します。
あなたの状況に照らし合わせながら、希望のイメージに近い制度を選んでください。
介護休暇とは、短期間の休暇
介護休暇とは、家族を介護するために一時的に休暇を取得できる制度だと考えると分かりやすいでしょう。
〈利用イメージ〉
- 要介護者の突然の体調不良
- 病院への付き添い、送迎
- 介護施設の見学、体験
- 福祉用具のレンタル申請
- 介護保険などの手続き
- 介護士やケアマネジャーとの面談
- 日常生活の介護
介護休暇は、介護休業に比べて取得のハードルが低く、急な介護にも対応しやすいです。
そのため、常に介護すべき状況というよりは、一時的に対応が必要という状況に適しています。
また、1年間につき最大5日まで休暇を取得でき、時間単位での取得が認められている点も特徴です。
時間を細切れにして休むことで、仕事への影響を最小限に抑えつつ、必要な分だけ介護を行うことができます。
介護休業とは、長期間の休業
介護休業とは、長期的な介護が必要になった際、一定期間の休業を申請できる制度です。
〈利用イメージ〉
- 自宅で介護するためのリフォーム
- 遠距離介護から同居するための変更
- 介護施設に入居するための準備
- 看取りが近くなってきた場合の対応
- 介護の計画を立てる書類作成や手続き
介護休業は、介護休暇よりも要件が厳格で、事前に書類を提出する手続きが必要です。
その分、長期間のまとまった休みを取得でき、介護体制を一気に固めることができます。
通算で最大93日間の休業ができるため、その間に介護と仕事を両立するための計画を立てるのがオススメです。
一気に93日間を休まずとも3回まで分割できるため、うまく制度を活用しましょう。
介護休暇制度について分かりやすく解説
ここからは、介護休暇制度について分かりやすく解説します。
具体的に解説するのは、以下5つのポイントです。
- 介護休暇制度で取得できる休みの日数
- 制度を利用するための条件
- 対象となる家族の要件
- 介護休暇中の給与の扱い
- 介護休暇の申請方法と必要書類
介護休暇の日数は、年間で最大5日間
介護休暇で取得できる休みの日数は、介護を必要とする家族が1人の場合は年間で最大5日間です。
もし対象となる家族が2人以上なら、年間で最大10日間まで休暇日数が拡大します。
介護休暇では、日単位だけでなく時間単位で、取得する休暇を計算できるのが特徴です。
たとえば、就業時間が8時間で対象家族が1名の場合は、40時間分の休みを取得できる計算になります。
そして、この年間の日数は、1事業年度ごとに切り替わる仕組みです。
つまり、事業主が特に定めていない場合、毎年4/1〜3/31のスケジュールで日数が更新されます。
介護休暇の条件・対象となる家族
介護休暇制度を利用するには、労働者と介護を受ける家族が特定の条件を満たす必要があります。
まず、対象となる労働者と、対象とならない労働者は以下です。
〈対象となる労働者〉
- 介護が必要な家族がいる方
ただし、毎日ごとに契約が更新される短期の仕事をしている場合は対象外。
〈対象とならない労働者〉※労使協定という会社のルールがある場合
- 会社に入ってから6か月が経っていない方
2025年4月1日以降はこの条件がなくなり、入社して6か月が経っていない方でも、制度を使えるようになります。 - 1週間のうち、働く日が2日以下の方
次に、対象となる家族は、以下のとおりです。
〈対象となる家族〉
- 配偶者(事実婚を含む)
- 実の父親・母親
- 配偶者の父親・母親
- 祖父母
- 兄弟・姉妹
- 子ども(養子を含む)
- 孫
対象となる家族は幅広いため、親などの家族を介護する場合は基本的に問題ありません。
ただし、おじ・おば、友人、同居人などを介護する場合は、対象外となってしまうため注意が必要です。
介護休暇中の給与は、有給か無給か
介護休暇を取得する際に給与が支給されるかどうかは、勤務先の就業規則によって異なります。
介護休暇は法律で定められた労働者の権利ですが、賃金の支払いに関する規定は法律で明示されていません。
そのため、多くの企業では無給扱いとなるケースが一般的です。
ただし、福利厚生が充実している企業では、有給での介護休暇を認めている場合もあります。
まずは、介護休暇中の給与について、就業規則などで事前に確認しておきましょう。
介護休暇の申請方法
介護休暇を申請する際、法律上では「口頭」で「当日」に申請することも可能となっています。
ただ、会社が指定する申請フォーマットがある場合は、トラブルを避けるために提出しておくのが良いでしょう。
もし会社にフォーマットがない場合、厚生労働省の公式ページから様式をダウンロードできます。
また、申請時には、対象家族が要介護状態であることを示す要介護認定の結果通知書などが求められることも。
前もって、人事部や総務部などに確認しておくとスムーズに休暇を取得できます。
介護休業制度について分かりやすく解説
ここからは、介護休業制度について以下5つのポイントを解説します。
- 介護休業で取得できる休みの日数
- 制度を利用するための条件
- 対象となる家族の要件
- 介護休業中の給与の扱い
- 介護休業の申請手続き
介護休業の日数は、通算で最大93日間
介護休業では、対象家族1人につき通算93日間まで長期的な休みを取得できます。
この93日間の使い方は、1回で3ヶ月ずっと休業することも、3回まで分割して休むことも可能です。
分割する場合の例として、1回目に30日間、2回目に18日間、3回目に45日のように柔軟に分けられます。
ただし、「通算」で93日間であるため、介護休暇とは異なり、年度が変わっても休業できる日数は増えません。
また、会社の定休日であっても、93日間の休業日の1日としてカウントされる点にも注意が必要です。
たとえば、土日を定休日とする会社で1週間の介護休業を取得した場合、休業日は5日間ではなく7日間とカウントされます。
介護休業の条件・対象となる家族
介護休業を取得するには、労働者と対象家族が法律で定められた条件を満たす必要があります。
まず、対象となる労働者、対象とならない労働者は以下のとおりです。
〈対象となる労働者〉
- 介護が必要な家族がいる方
ただし、毎日ごとに契約が更新される短期の仕事をしている場合は対象外。 - 契約で働いている方(パートやアルバイトなど)
ただし条件として、介護休業を取る予定の日を基準にして93日が経過した日、その日から6か月以内に契約が更新される可能性があること。
〈対象とならない労働者〉
- 入社してから1年が経っていない方
- 申請する日から93日以内に雇用契約が切れる方
- 1週間のうち、働く日が2日以下の方
次に、対象となる家族は、以下のとおりです。
〈対象となる家族〉
※対象家族は、介護休暇の要件と同じです。
- 配偶者(事実婚を含む)
- 実の父親・母親
- 配偶者の父親・母親
- 祖父母
- 兄弟・姉妹
- 子ども(養子を含む)
- 孫
介護休業における要件のポイントは、休業後に労働者が職場に復帰することが前提である点です。
これは、介護休業という制度が、介護による離職を防ぐことを主な目的として定められた制度だからだと言えるでしょう。
介護休業中の給与は、有給か無給か
介護休業中における給与の扱いは、介護休暇と同様、勤め先の会社によって異なります。
特に法律で決められていないため、現実的には無給扱いとなるケースが多いようです。
ただ、介護休業の場合は、雇用保険による「介護休業給付金」を受け取れる可能性があります。
給付金額として、休業開始時の賃金日額の約67%が支給されるという制度です。
介護休暇では利用できない給付金ですが、介護休業によって収入が無くなることが不安な方はぜひ検討してみてください。
「介護休業給付金」に関して、具体的な条件や受け取れる金額については、こちらの記事で詳しくご覧いただけます。
介護休業の申請手続き
介護休業を取得するには、休業開始日と終了予定日を決めた上で、開始日の2週間前までに書類を提出しましょう。
介護休暇に比べて期間が長い分、介護休業では「書面」で「事前」に申請する点が特徴です。
基本的に、事業主(社長)に対して申請することになっていますが、多くの場合は人事部や総務部が窓口になります。
会社の申請フォーマットがあればそれに従い、もし無ければ厚生労働省のページから様式をダウンロードしましょう。
なお、1回の休業に対して一度だけは、理由を問わず終了予定日を延期することができます。
ただし、延期する際には、終了予定日の2週間前までに会社に対して申し出ることが必要です。
また、長きに渡って職場を離れることになるため、業務の引き継ぎや周囲への説明もしておくと良いでしょう。
【Q&A】よくある質問
ここからは、介護休暇と介護休業について、さらに掘り下げた内容をQ&A形式で解説します。
- 派遣社員でも介護休暇は取得できる?
- 介護休暇時の「介護を必要とする理由」はどう説明する?
- 介護休業と有給休暇は、どちらが優先される?
- 介護休業を使い切った場合、どうすればいい?
派遣社員でも介護休暇は取得できる?
はい、派遣社員であっても、介護休暇や介護休業を取得することができます。
ただし、以下のように条件があるため確認しておきましょう。
〈介護休暇を取得する条件〉
- 雇用されてから6ヶ月以上が経っていること
- 週の所定労働日数が3日以上であること
〈介護休業を取得する条件〉
- 雇用されてから1年以上が経っていること
- 介護休業を取る予定の日を基準にして93日が経過した日、その日から6か月以内に契約が更新される可能性があること。
派遣社員の場合、まず派遣元(派遣会社)が申請を受け付けます。
その後、必要であれば派遣元だけでなく、派遣先企業とも連携する流れです。
介護休暇時の「介護を必要とする理由」はどう説明する?
介護休暇や介護休業を申請する際、労働者は「介護を必要とする理由」を説明する必要があります。
基本的には「対象家族が要介護状態であり、日常生活に支障がある」ことを明確に説明すれば問題ありません。
たとえば、「家族が慢性的な疾患で入浴や食事の介助を必要としている」「通院のための付き添いが必要な状況にある」というように具体的であるほど伝わりやすいです。
介護休業と有給休暇は、どちらが優先される?
介護休業と有給休暇のどちらを優先するかについては、基本的に労働者側が状況に合わせて決められます。
たとえば、急に家族のケアが必要になり、短期間だけ休む場合は有給休暇を優先すべきかもしれません。
一方で、長期的な介護が予想される場合は、介護休業を活用する方が現実的だと言えます。
そのため、以下のような判断基準とあなたの状況を照らし合わせて考えてみるのがオススメです。
- 有給休暇の消化状況
- 介護給付金を受け取れる確率
- 家族の介護の緊急性や期間
介護休業を使い切った場合、どうすればいい?
もし介護休業を使い切ってしまったとしても、他にも介護と仕事を両立するための制度があります。
たとえば、労働時間を短縮・調整できる制度や、所定外の労働(残業)を免除する制度などです。
他にも、部署を変更するなどして、働き方を柔軟に変更する選択肢もあります。
職場の人事担当者や上司に相談してみると、すでに前例があるかもしれません。
あなたがうまく制度を活用することで、介護と仕事を両立できるように願っています。
こちらの記事で、介護に関する休職制度を一覧で紹介していますので、合わせてご覧ください。
まとめ
この記事では、介護休暇と介護休業の違いについて、詳しく解説しました。
2つの制度の主な違いは、「休める期間が長いか短いか」という点です。
1日だけでも休みたい場合は「介護休暇」、1ヶ月ほど休みたい場合は「介護休業」が適しています。
介護休暇制度のポイントは、以下のとおりです。
- 取得できる休暇の日数は、年間で最大5日間
- 休暇中の給与は、基本的に無給が多い
- 休暇の申請は、「口頭」で「当日」に申請可能
一方で、介護休業制度のポイントは、以下です。
- 取得できる休業日数は、通算で93日間(3分割まで可能)
- 休暇中の給与は、無給が多いが、給付金で補填可能
- 休暇の申請は、「書面」で「2週間前まで」に申請が必要
あなたの状況に合った制度を選び、介護と仕事を両立できることを祈っています。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。